▼詩
ネット歌集『ラジオ巍々峨々』
ネット歌集『ラジオ巍々峨々』
ネット歌集『ラジオ巍々峨々』
(発表機会ごとに更新アップ)
阿部嘉昭
1
【きたかみ恋歌】
きたかみの夏は薄荷をふくむ君の脱衣の音で眼を醒ましたい
億万回セックスをした感慨はたとへば万緑、緑陰の露
ブラジャーが乳を包んで女とは贈る水菓子、それかあらぬか
指もて髪を梳いたことも 夜の空に冥い銀河を見上げたことも
落陽をのがれて着いた崖つぷちの煙のやうだ、今日の騎乗位。
桜桃を口移しする日々の恋 種子嚥む役も日々振り替へて
セックスの渦中の話題に飛び出したバウムクーヘン、その嗜好歴
「月曜」の韻きが好きでその夜は君の背後にこの身を添へた
「紫陽花の季節もぢきに終るけど」「あまたの相似が怖すぎたよね」
寝息とは潮の干満 いづれまたベッドの岸辺がひとでに埋まる
便箋に似たるからだと思ひなし一枚ごとにめくつた 朝まで
ひと晩の性に涙のあまたたび憂ひもやがて大悲へ変る
星空の真下に置いた汝が肌に点描あらは、火のアンタレス
もう指を入れる処のなくなつたからだ一個が火中に白い
冷水を髪に注いで寝たあとの朝の雨音ただ寂として
キスもさう、食事もさうだ、君の舌は小さな雌か。静かで遅い
細魚の頭(づ)、吸ひ狂ふとき我々の代りを神が草笛で吹く
一切の音も立てずにフェラチオが終りすべてが夏の夕暮
躁の日は歌を唄つて縄を出し何処へともなく君を荷造り
きたかみの川面の五時は寝乱れる乙女子の髪、以後は知らない
(07年6月、始めの十首を立教入門演習で発表/後半十首は同年十月作成)
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かざむきによつてはこんなてもとからをんなとりだしあぶらいためだ
止血して七穴を掘り就眠す起きてこの身は真の渾沌
鏡持ち悪心興る品川の植草某に女生徒の脚
遠ざかる九月の城はいふなれば風でつくつたあらぬ虫籠
性愛のまにまに友と呼ぶほどの夕海をゆく帆船の見ゆ
成就なき恋をこの身に引き寄せてわたくしといふ成就なき影
瞰下ろせば蝸牛の殻の透明に遊星ゆるりとまはりつつあり
地の法に背きて蔦は樹を繃けりつたつたつたと鬼界 音色す
石鹸もてこの倦厭を洗ふかな非在非情はけだし桃源
下腹の棒の霞よ春来り心の梁の灰となるまで
屈託ない百花のなかに俺がゐて初めに逃れだす魅(もの)を頌む
ジミヘンに炎色つづく翻りひるがへりする異界への扉(と)も
みづ色に潤む懐紙にとほく書く「花泥棒にしかと咎あり」
(枡野浩一の「なにぬねの?」歌日記に書き込んだ「対歌」)
(08年1月~2月、ミクシィにアップ)
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アニメそも同一性の破壊にて押井論にも「危機」の字あまた
草薙や素子の延髄引きいだし梯子伝ひに海へ降りゆく
人形は音よりもなほ措定なし択捉に零る絮 など無謬なる
傀儡女が人形となる先行きのいづくにかある白拍子の歌
関節を球体にして身の先を四隅に向ける汝 魔方陣
(押井守アニメに材を採った歌=近藤弘文の書き込みにより作歌が促がされた)
(08年2月、ミクシィにアップ)
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蝋梅の黄は他界かな蒐めては手放す盤の声さまざまに
(ブログアップした歌に倉田良成が歌を付け、それにさらに返歌した)
(08年2月、「なにぬねの?」にアップ)
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【詩の朝】
をちこちのこの蛙卵状かはづらの無を孵さむと詩がペンをもつ
朝ごとの溶明かなし眼のみによる詩など湖底の波頭にも肖て
をちかたのひかりはつかに詩の朝は凶王の髪まづは刈るべし
訪ね追ふ詩心の先に田鶴ありて羽間の雪に良貨おもほゆ
朝を捏ね顕はしめたるをとめ子の胸乳の平らに平成の詩を
(08年2月、ミクシィにアップ)
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異界より虹眺めむと瞰下ろせば谷間の霧に千の装束
曲馬なき汝が卓上のサァカスに手術後の糸ひそと揺れをり
黒シャツもて夜へまぎれむ針葉のゲルマン森に無意識の帯
NO FUNとのたうちまはる関節が球体だつたイギイばらばら
秀徳の念仏ラップやかうもりが婆沙羅婆沙羅と電線に墜つ
(佐藤友衣のミクシィ日記に書き込んだ歌)
(08年2月、ミクシィにアップ)
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吉岡やちりぢり実る陽光は女陰に目の玉嵌めるスペイン
ドルフィンに乗る児すがしやドルフィのふるうとのごと身も幽けくて
喩でもなく湯でもなければ悠々と水風呂で死ぬ湯煙りひとつ
低血やをみなに蓋する如月は稚魚も行き交ふ淡き精液
夕飯はサイケデリシャス白鳥を泡で煮〆た韃靼古城
蒸散をただ旨とする浮かれ女に付きし名、雪を掌上に愛づ
帰る者つねに他霊の尾を曳きて開けた扉の外(と)にも闇降る
佐渡の母見し白昼の砂浜は盲ひの底よりなほ明かりゐて
早乙女の早春の影ふとよぎる野は広くして黄泉へとつづく
(玉川満のミクシィ日記に書き込んだ短歌)
(08年2月、ミクシィにアップ)
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【生活詠の試み】
白鹿の崖くだる見ゆものみなが遠さとなれる時を愛しむ
天領と呼びたき箇処が詩にあれば元寇の徒よ裁きするわれは
はだへ奥にしづもる明り千歩後に帰りし人が玄関にゐて
をんじきはたえずまがなし蓴菜の類を浮べぬわが食もなし
鴨のあぶら鍋に仕込めば観音の黙想のごと円の数かず
針山を何とも知らねこの髪もをみなに縁なく擾れ乱れて
をんじきとまぐはひ分けず辿り来て一身の老い冬の野明り
狭窄と胸郭が似て搾りだす詩歌なべてに雲の峰ある
的となる徴を白に美童らの白は散るらむ木の間の冬に
そのかみの父のにほひのなき裸ひとつ撓めて昼を湯浴みす
(08年2月、ミクシィにアップ)
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甲羅にはあまた夢殿池の日のひと日を万に亀泳ぐかな
人の生(よ)は炎ゆる夢見の残りにて亀の潜りの消火すがしも
水紋の須臾と百年さかしまに月映る夜を亀はただ泛く
夢見たり亀の甲羅を観音にひらきて龍の宮ひそかなれ
見はろかす亀は愛語の数にして終りの風の起りならむか
(阿部ミクシィ日記に望月祥世が書き込んだ歌への返歌)
(08年4月、まとめたかたちで「なにぬねの?」にアップ)
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プロミスト・ランドは千の鶏に千の卵を抱かしめる風
見し卵の下なる千の卵かな風の爪弾き「カノン」を奏づ
若きネロよ汝が驕慢の美(は)しければのみどうるほす卵を禁ず
このひと日卵として生く彼方には風に溶けあふ黄身や白身や
卵殻の真粗き肌理を憎みゐてこの乱心を磨き温む
卵料理の卵の香りふるとしは母を火刑に処してほほゑむ
食べ過ぎし卵のゆゑにはつなつは鶏の貌して泪し死なむ
割れやすさ吾(あ)にも累卵にもありて恋は錆びたる銀杖振るふ
箔のごと卵を焼けり薄闇は闇うすくして黄金(こがね)の予感
熱もたぬ焔のままに卵炎ゆこの眼のなかに殻ちりばめて
一卵を考へ世界の卵おもふ地上なべても水引きし湖(うみ)
悪徳は卵形をなす球もちて露ぶかき野を恨み歩けば
(田中宏輔のミクシィ卵日記の数々、その書き込み欄に書き込んだ歌)
(08年5月、ENGINE EYEほかにアップ)
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卵とも雛ともつかぬちひささを吉田と呼びて東風のうるうる
文字どほりエッグヘッドの卵坊が白き脆さを音に割らるる
生(あ)れてより掌(て)に卵殻を握りきてしかも卵にあらざるを渡す
数瞬を旋回してのち蒼卵はうれへる人の顔となりたり
等間隔のしづくのもとに卵を置くその発狂の紅蓮となるまで
卵生は汝(なれ)五月闇精子より欠けて生れたるホムンクルスわれ
中庭に卵かがやく中庭は午前を哀しむ孤老の鬼門
撲殺の代りに夏は歯を欠いた老婆の口に鸞卵(らんらん)を置く
茹卵を肴に一夏を飲みつづけ弱さへうごく星雲爆発
(同上)
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赤褌をあまた侍らすわが宮は薔薇窓破れ東風のそよ吹く
人間をやめるも何ももともとは蛾糞しづめるわが心根が
したばらのへちま暴走藪知らず囁けるそれ、「にんげんだもの」
檸檬より幽霊すつぱい幽霊を搾りてのこる檸檬の視像
依代に異な実体化ありもくもくと旧詩のことば人と生(あ)れたり
落胆は落雁に似て和三盆少しづつ舐め口も夏風
少年の背後の瓜に錐まはす六十年後の夏や仏縁
(同上)
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J也グズるはつなつに付く王冠は滴のかたちす泣きのやむまで
(盛田志保子のミクシィ日記に書き込んだ歌)
(08年5月、ENGINE EYEほかにアップ)
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窓外は霏霏と卵ふる破裂音なくして地には緋絨毯おもほゆ
青飯を霞みて包むオムレツは孤崖にありし涕泣の月
くるりんと卵より声聴えきて少女も星も初夏をくるりん
蝶発てば城楼ひとつ崩れさる卵の夢はいづくに置くべき
両の掌に卵をもちて風に佇つピサの斜塔となる玉響に
卓上の卵の立ちも斜めにて世界の斜性はつか忍び来
一周の択び無限にあるものを卵と呼べり周たしかにて
捧げもつ卵殖ゆる間の梅雨寒は暗庫にいかなる雛も殖えざる
(田中宏輔のミクシィ卵日記の数々、その書き込み欄に書き込んだ歌)
(08年5月、ENGINE EYEほかにアップ)
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青草が青酸に見ゆ星まはる亀の甲羅の上(へ)にわれ佇てば
百隅に甲羅干しする亀あふれ曝書もて万巻の真夏はじまる
池の虫なべて朧ろとなるなかを亀の泳ぎの語尾掠れたり
甲羅裏みせて浮べる亀の死のごとくありたし食事の焉り
すつぽんの腑の耐へがたさ青や金 竹生に似たるもの何もなし
(森川雅美のミクシィ日記=お題即興詩シリーズの「亀」に書き込んだ歌)
(08年5月、ENGINE EYEその他にアップ)
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眼鏡を分身としてゆふぐれの冥さにまぎれ光り消ゆるも
古眼鏡ほこりを集む明治よりこのゆふぐれに接岸をして
恐るべき反射たとへばをとめごの眼鏡に映るサド哲学の文字
両の眼に鏡のたぐひ置く梅雨は路傍の白花たよりなくして
鏡片をゆふぐれに見き静心(しづごころ)ある眼鏡のにれがみならむ
(松本秀文のミクシィ日記に書き込んだ歌)
(08年5月、ENGINE EYEその他にアップ)
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一人(いちにん)となりて浅夏に身を置けりかつての藤棚みどり垂らして
定死など枕ばなしのひとつにて屍のゑがく飛散のみ思ふ
(枡野浩一のなにぬねの?短歌日記に書き込んだ対歌)
(08年5月、ミクシィにアップ)
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蛞蝓に水銀をふる来世には塵のゆきかふ無が近づくも
(ミクシィ田中宏輔の「なめくじの夢」日記に書き込んだ歌)
(08年5月、ミクシィにアップ)
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性暦をいつはりディスプレイの前にあれば全身くらげゆらゆら
パンドラの開けずの箱をもちきたる汝(いまし)も我も風前の塵
惑星リゲル夜空に吊られ恋をゆくわが自転車も愛を踰えゆく
瞼には小人のをどり惜しむべく瞑りもせず事を見てをり
陽だまりに小人群れゐる消滅を演じむとただそこに群れゐる
きりぎしより投身つづく身を皿に虚空へ擲げりよみがへるため
静寂をおのれの睡りに閉ぢこんで犬、円形の初夏の沼なる
啼くといはぬ犬ごゑ鳥と遠くして唸りに銀のふるへもちたり
すれちがふ瞬を火色に染められて昨日の犬は今日の似すがた
犬をもつ手には柔和が生(あ)れそめて刹那ふしぎに栄螺の感触
腹這ひの犬の周囲も恐れたり「鬱の起源」は金(きん)に十重せり
腸(はらわた)を投げつつ死ぬるをとこぎにためらひ傷も白き綿ばな
表裏なき水母のからだおもひをり空中の水われに展けば
イメージは孤絶のなかに端坐して個の眺望を締めてうるほす
本物の詩人おそらく詩のかたちなせる背曲がり杖のたぐひか
腸(はらわた)を秘め紫陽花の辺をよぎる千々なるものの放射すがしく
血流はしづかな砂を底に溜むわが眼底のちかくおもへて
ときをりはわが身を剖く去年(こぞ)呑みしこがね酒の帰趨たどらむとして
陽光と風の境に身をおいて歌意なき今や無尽の溶媒
しらほねを初夏の陽が射す透視体として下天を渉りてゆかむ
無音のアッシュ、アンジュの声にありしかば詩は空をゆく葉月のわたげ
時と場所ふりさけみれば束をなし音そのものに意味も沁みだす
傘も黄泉の迅(と)き浮花の移りかなはじめに恋ひしあの俤はや
(田中宏輔のミクシィ日記に書き込み)
(08年6月、ほとんどをなにぬねの?にアップ)
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六月は雨夜のみなと鳥籠に無言鳥容れ沖をひた漕ぐ
ブルーよさらばと言ひ放ちては青の外(と)に囚はれてゆくわたしと窓辺
夏の駅といふは来世に接がれゐて江差駅に降る北なる陽射
狂ひだし後ろ歩きのこの梅雨は長歌の円に身が近づくも
あぢさゐに楽音ひそむ雨中にて円き淡彩ほどけゆくかも
ワセリンを荒れ喰ふどんらん六月は狂ひくるひて鼠の毛艶す
高井戸はどこぞと翁その場所は天に水穴穿つ浄域
(盛田志保子のミクシィ日記に書き込み)
(08年6月、大部分をミクシィその他にアップ)
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【憂鬱のうた】
花ぬちに虚のしづもるを剖きゐてそこより北を世は明かりせる
弁明に数語をもちふその数語ギリシャの丘の繊き花ばな
スクリーンプロセス好む俳優の外の他界がとほく動くを
別れゆく大杉もとの地勢にはもとより分離の気配みちゐて
性交の青野走りにしくじつて記憶が記憶打つを瞰下ろす
鱗粉を紙に転位すこの生はうすく死んでもなほ生きのこる
夜を暈かすとほさをもてる蛾の模様いづくの胴に馴染まむとする
粉を渡し粉を受けとる愛にして交易の外(と)や麦蒼くなる
たましひの減量損じず睫毛より入りくる初夏も波状のひかり
透くものをいだし展けばカーテンもにれがむごとく愛ひるがへる
親不知ならびたつみち平成ゆ父母(ふも)のおもかげ反射の相に
咲きそめのあぢさゐ野菜に肖たるかも六月の嘴(はし)天に隠るる
恋蝶の狼藉を見き暖気とは淡きが交むひかりの梯子
芒野を書見の台に置きし日は兜子たなびく浩司したたる
幸彦に才(さえ)の尠なさしるくとも乱数表よ獄のにほひす
(08年6月、ミクシィにアップ)
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妖怪をゆたかな無駄と切り捨てて口に穴あるそれも渾沌
死後の日は円了として池をゆく浮草うごき夏をゑがくも
(明道聡子のミクシィ日記に書き込み)
(08年6月、なにぬねの?にアップ)
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【われたば10首】
われたばをかぜにほどかせいととなるろくがつぼうじつしんやのまてん
ものみなにげんけいなくてふざけるなだからわれたばただかぜにゆる
あしたばのことばのひびきおぞましくわれたばわれたわたしながれた
やけめいたことばかきたくわれたばのえっくすせくすよるのくすくす
たばにしてわたしあげたくくろしゃつのこひのしづくのぬれになりたく
わらであるわらべのころをおもひだすわれたばすこしもみにむすんで
かぎたばのやうなひらけがないならばわれたばしゃらとかちにおとして
よるをさくあぢさゐまるくはしきかなわれたばむすぶそとのゑにしも
あーもんどのくわりんうるはしみつばちのきえたあしたをぬるるわれたば
われたばがきみたばをだくせっくすはかみをまるめてばさばさとなる
(08年6月、ミクシィにアップ)
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フイルムに鋏を入れてそれぞれの乙女の時を島嶼になせり
島嶼なら南へつづくを佳しとする星の消えみち椰子の消えみち
はかなくて霧がみちれば朝のなか乙女のごとく夜がのこるを
切り離すもの紙のほかなくてなほクラゲのゆびが国生みを模す
空白を積載しても荷台には真昼が匂ふやうだ夏来る
夏をゆき専(もは)ら二人となる先に河口ふたつの並ぶ奇異あり
わが黙(もだ)を繁るにまかせ愛しきを髪消ゆるまで後朝に剃る
(依田冬派のミクシィ日記に書き込み)
(08年6月、ミクシィその他にアップ)
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細胞の老化しるくて胞核の位置ひかり吸ふ病葉の群れ
(松本秀文のミクシィ日記に書き込み)
(08年6月、ミクシィにアップ)
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書く右手(めて)を左手(ゆんで)が支ふ謂ふなれば私一人に二川流れる
(谷口由一のミクシィ日記に書き込み)
(08年6月、ミクシィその他にアップ)
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【ナンセンス歌】
YOUくたるワイキキにはぜはまなしてキキモラふふむもんどのすけも
まどろかしまどかなゑんをくるまきてつるまきにすむででむしがすき
ぼんのうがぼのぼのかすむへそのしたきのふのきりもきらきらきゆる
はるはげんげのげんしょうフェノミナみなのしゅうみのにはしりてみさををすくへ
かながはのあらゆるかはやわうごんをかなたながしてさがみさやさや
(08年6月、ミクシィその他にアップ)
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光る夏にトロッコをもて侵(い)りゆけばいづこの奥も不一ならざる
部屋ぬちにきなこを蒔きて幼童の奇しき支配も麹のかをりす
毎日が乾杯ならば私こそ卓袱台胡坐の私の豚児
(盛田志保子のミクシィ日記に書き込み)
(08年7月、ミクシィその他に一首を除きアップ)
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まつらはぬ眼差しのさき石庭は石に還らぬ石あふれたり
巨き手がやおら現れ犬掴む 犬、保安官バッヂにも似て
脇腹に小さき帆船痕ありて海坂くらむ夏のおもひで
わたくしがひとつの場所なら陽光にこの骨の梁、微塵に砕けよ
あかるくて禾原にいま南風(はえ)が充ち地球をはふる往古を葬る
葵公園にて蒼愛も発展す人間犬と犬人間と
少年型サイボーグらが極光を見て凍結後砕いたまなざし
(田中宏輔のミクシィ日記に書き込み)
(08年7月、ミクシィその他にアップ)
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【麻綿原】
麻綿原といふはしづかな炎熱に万の紫陽花顕はす魔の山
段丘にあまた紫陽花並びゐて揺れひとつなし蜜も感じず
紫陽花は泛く球なればその万を白く眺めて浄土の心地す
多く死域の湿地にありて紫陽花は毒葉繞らせ己れ泛ばす
紫陽花と山蛭の縁ちかきかな紫陽花に血なくて蛭は人待つ
紫陽花にむしろ嬰児も音楽もなければ虚ろの大群とすべき
よろづなす白紫陽花が陽を享けて恐鳴のごと色泛べそむ
(08年7月、ミクシィその他にアップ)
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紫陽花球語るに百の語り方しづかにまはる色幻なれば
鬱球(うつだま)といふは世外の水ふふみ退転ほかなきあぢさゐの花
(なにぬねの?倉田良成の食日記に書き込んだ)
(08年7月、ミクシィその他にアップ)
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午前四時東京の空に摺り手して手を冷やすこのマイナスイオン
(ミクシィ依田冬派の詩日記に書き込んだ)
(08年7月、ミクシィその他にアップ)
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【忘却について】
忘れじよ透写画面に梁なした侠情の色、あふるる異常を
盲目の日は光ふるそのなかを往年逝きし犬の影狩る
観念の天使がよぎりふと俗なこの水髭も蒼く火傷す
ピタゴラスの徒は星間を埋めむとし数みちびくも零に至らず
嗅覚をもつ指先をうろに挿しひと晩妻と死後を話した
別段の嘆くに当る今もなく詩友と訣れしのちのひまはり
夏は鞄に真水を詰めて巷ゆくさや走る声「割れるなら今」
攪乱の因がもとより躯にあればあを星まはる音も楽とす
夏などはヴェクサシオンに肖たるかも限定反復ただ嗤ふべし
年どしに胸乳の蒼く暈けしかば忘れし季節なべて秋いろ
(08年7月、ミクシィその他にアップ)
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蝉麿とわが名呼ばれり空蝉を着て夏の水消えゆくを視る
児(こ)を放ち雷鳴の昼まどろめば綿毛とあそぶ蜘蛛の心地す
炎昼を北上しにゆくうろくづと恋をしに行くそれだけのこと
(盛田志保子のミクシィ日記に書き込み)
(08年8月、ミクシィその他にアップ)
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蒸し器には春の焼売咲きみだれあれから消えし瀬の渡し板
(田中宏輔のミクシィ日記に書き込み)
(08年8月、ミクシィその他にアップ)
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手詰まりの自己史記述のこの朝もにぶく皺なすあさがほの衰(すゐ)
シガテラを享く僥倖や神待ちて近江の寺にあきつ喰らへり
三年を淵に瞰下ろす色恋は離るる白火、薄荷の冷えもつ
をとこへし風に割れざる百年に急いて着物の柄こぼしゆく
百年の孤りに配する千年の多勢、眼路みな白草木炎ゆ
水に泛く円のさみしさ「決」の字のさんずゐのゆゑ民草は知らず
おそ夏はいましの膚の螺鈿へと十年の夢きらり漾ふ
なが雨に甲羅の濡るる気配してわが一年などみだれほぐるる
白花をゆびもて挟むあらはれし昔ただ切れわが半減期
すこしづつ死ぬを常とし色失くすわがうつしみと空の鳶の輪
常闇の黒かがよひをとほりたり手にもつものも美(は)しき黒とす
千年の白ともおもふ忌み曇りさくらと霊の境つかめず
川上に人あるべきを葛の花踏まれもせずに匂ひ古りたり
千年を耐ふる喩として色もなき鴉ゆきかふ曇り空など
歴年が艶なるゑみを返すなら一刀のもと寵姫血まみれ
(「なにぬねの?」コミュ「百年の孤独」「海と毒薬」に投歌)
(08年8月、ミクシィその他にアップ)
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凶兆は暁闇あるく郵便の赤ポストにして誤配うれしく
おそ夏のさむさ葡萄を掌(て)に割いて果汁たばしる藍の朝明け
部屋隅に天狗となりて佇ちてゐき脱分節にけぶるわが身が
(08年8月、ミクシィにアップ)
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ちちぶさは谷底の花ながるるに壊死なくば乳房とほく流れよ
(依田冬派のミクシィ詩日記に書き込み)
(08年8月、「なにぬねの?」にアップ)
●
2
【自身のゆび】
瀉血の要感じ次善の排尿を了へて春夜は真闇ふかしも
同寸の樹を共依存の的としてそんな木陰を蹲みつくさう
膀胱をもつ定めなら人みなも晩鐘として見えずなりたり
丘ゆ丘往く高熱の自転車もいつか乗り手を草生に落とす
月齢をもつて呼び名を変ふるまの恋や枕に相手散りぢり
剥くことを自負しをりしが時々は卓上に散るわが指十本
おのれ焼く手立てがことば、持ち重る耳も脳(なづき)へぢかに順ふ
消えるべき身の糊代をどこと決め半ばに真夜はわれを折らむか
正中の線もて魚は断罪のかぎりをおよぐ我は水飲む
幻術のやがての毛野はうすひかる老いのわたげのあまたうかぶも
(09年05月、ミクシィにアップ)
●
【代田物語①】
星のよるをひと晩あるいて下駄の歯のあひだにたまつたひかりをあげる
眼圧のたかさのままに緑内障、みどりの奥の障りにみとれる
数人のをんなはすでにカレー粉で無価値なんかへきいろく絡む
目鼻おとすシャワーを浴びて大悲日は肉の嚢となり横たはる
三塁打に何か傷ふかいものをみた。その外野にも七福神が
禁煙の三つきが経つてもう煙の昇天芸もやらない僕だ
だからといふわけでもないが腰に銀の鎖をつけて北をみてゐる
しじまつて「肉魔」と書いても良いかもね。ずつと静かな抱き寝がつづく
代田あたりのだいだらぼつちの足跡でかつてプラハの学生を抱いた
現象に減少はある。それならば軽くなるべく書を読みつくす
(09年05月、ミクシィにアップ)
●
【ラジオ巍々峨々】
俺は鉄のあばらに夕を響かせた。空は断崖、ラジオ巍々峨々。
黄金つて停まつてしまつた煙だろ、自慰の遠くに雲として視た。
反復に時間単位といふ一定の実質があつて、女のやうだ。
滑り台型の詩歌が好きだ。初夏だからか、鉄棒型の文より。
風致地区のやうな女だつたから放置自転車の銀波がきれい
「にべといふ魚は南方的な鳴き声でうたふ」と漁師の便りに
檸檬内螺旋発見、掌にとつてスクイーズのみで視姦に代へる
伝言ゲームこそがエンドを育てるのにいまさら何の取材だ埴輪め
紳一の書庫から出土した発条をたとへば耳孔にうづめて。レトロ?
裏返す暇あらばこそ胸合はせ肛門性交したら折れてた。。。
(09年05月、ミクシィにアップ)
●
【連理連理】
連理連理、たとへばきみの脇ばらに春告げどりの羽毛あること
花烏賊のやうに瞳がうすくなつた。みなわであつて魚でない今。
白樺期の終りは長い詠嘆をあげてゴーカートで「?」描くかも
最初つから俺はひとつの露天だよ。夏帽といへ、かぶらずに狂ふ。
野煮といふ料理をきみと発案し、辛夷とともになくす春ゆび
海鳴りの月日をここに招きたく馬刀貝、貽貝、さくらに鳥貝
さまよへる足=肉球を吟味され。富子固有の仏縁…消えた。
ほぐれるもの少々詰めてゆくゆくは繭となりたい配送員ぼく。
脊柱が百本、アテネの木琴も風を合図に青伊豆で鳴る
署月では袖ふれ合つた故人らが身をすりつける百日紅さがす
(09年05月、ミクシィにアップ)
●
【恋記】
後日、以下の数首も「囲ひ」となすならば。ばつくれる西風だ、恋記は。
恋記れんき、運転中もフェラチオで環八を。(『ぼくら』/『風の眷属』)
髯が焔のいろにぼけるなら陰毛も貴く哀しむむらさきとする
寝床を鏡に変へられてのち猥王の俺も電磁として捕まつた。
その沖は一氾濫の予感だらう。沖の手前の、開脚を愛す
朝露じたい連山となる芋原でおまへはきつとつかへない蔓だ。
拠点とは瞳のかずよ思へらく、あやめをほしいままにしていま
十人で野をひた流れ十人で裸木に信義の裸形も彫つた
その際は近似値的に謬まれる「真」に女性冠詞もつけて
肛門をみて哀しむを一会のをはりとなして風の穴穴
(09年06月、ミクシィにアップ)
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【尾崎】
めんたまの球冷えびえと日暮には尾崎が刺した・挿した・鎖した
羽に似る花そばに身を置いてみて くづれる尾崎の百や千ほど。
人文字で書かれた文字などただ忘れ《ゆく春ひと日歩みきつたり》
鶸でなくみみづくに似た後頭部。愛してあの世の尾行うづまき
身頃とは身のいつごろか藍色の杉本真維子の耳裏おもふ。
てのひらに渦なくてきみの裏側を撫でればただの露の秋きみ
身のなかに身のある初夏を風説がふるへよぎつてこの幽門は。
盃を傾げるやうにきみの身を斜(はす)にし漏れたひらがなの汁
肉体の輪郭説は謬見だ。日照雨(そばへ)の京にも妓が千よぎる
死ぼたるの堆積ほどのわたくしは昔がたりに不可喩をもちふ。
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【辻にしてY字路】
辻にしてY字路、俺の形状は。牛車ころがるひと春を泣いた。
瑞鳥の白い声帯もつゆゑに湖底棚からの弥撒曲にそぞろ
ハイネックになかば縊死した諦念がきれいだ、鴨の愁ひのゴディヴァ妃
肺尖のしろき焔を誰に告げむ芒野荒れて、岡井愛あれて
凍る斜面を否認しつづけいづくにも降りずの三日がひとつの時間。
行列喩とふもの暗に構想しひとりのみ身ぬちの列なりを解く
肝に脾が膵もがならぶ充実を春とおぼえて坂を下りきぬ
眼に鼻が眉もがならぶ淋しさを秋とおぼえて川にわが沿ふ
など頭(づ)には耳順ひてさまよひの位置刻々と草の中なる
絞めた鮫かず知れず時に浪恋うた錯誤の俺が――したたる上陸。
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【口遊び】
不香びと、チンギス・ハンに運ばれつ砂汎域も晩春と思ふ
そんなとき便り舞ひこむ袖ゆ袂、着物のぼくが怯でふくらむ。
車中より馬上うかがふ。馬上には衣・かげろふ・人無しの恍
それほどの淋しい場所にきみと来て同じ地球儀を交換しただけ
やがて鰈の白い身を食(を)し夕暮は相模ことばに脂まはるも
車夫にして写譜。楽想のごとき妃を長塀つたひ終春へはこぶ
若葉萌え澄みわたる世の葉裏には哀ともまごふ銀のいくつか
春から夏、わたくしのしたことはただ蝶吹き消した口遊びかな
くちづけもわが口遊びのひとつとてそらごと舞へるゆふつかた美(は)し
朽ち恋のいつしん桐の樹下に置き夏まへにしてこの青凄し
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【代田物語②】
水栽培の球根なのか透けつつも腐りへ向かふぼくらの未来
大著のやうに俺のからだが重たくて抱いた途端のきみも枯葉に
四畳半期、真四角部屋でした交を文革と呼んだがおまへは消えた。
女性字を置くべきそこにもつれ果てた蔓ばななのか縞薔薇の乱
べえごまと同じだ まはるめのたまのまはり叩いて世界の夕日だ
性愛に削りがあつておが屑も記憶のために取り合つてゐた
ぶつ放す一身のための空なくてだからオレらは遠泳をした
曲目はパープルヘイズ、ヘイズ氏の10秒のため10秒演奏
一級河川のほとりで二級の性愛をする嬉しさの等々力渓谷
ライラック何とは知らぬ色彩をむらさきとする磊落きたる!
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【分類】
円窓に頭部を截られるやうにして俺は浮いてゐた 分類として
一身にしてなほ分類の俺だから貰つた札(ふだ)で泣くこともある。
舌下だらう、飢のはじめも。熱誠書の、海と轟く言葉のなかでは。
冷愛の成就に向かふ道すがら、蕃人の羅に見えた太陰。
舌のかず殖やさうと嘘を重ねきた汝が口のミルフィーユ型美(は)し
眼に積もるマロン花粉の黄なるゆゑ《執事の姿で扉を探した》
眼が醒めた、願望世界は切つ先のかたちが喜色らしいけれども。
――てのひらにみづうみつくる愛にして数歩で消える水もかがやく
足もとの星拾はむと撓む汝の――尻間にとほく別星のみゆ。
重力は権力に似る、野遊びで星斑の馬も五頭潰した。
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【遅速】
かなしみと遅さに関係ある夕にゆつくり光りだす星ひとつ
天使性と速さに関係ある朝はからだを蜜がしづんでいつた。
遅速すらこの天体の相対か。――下火のぼくが来ぬ人を待つ
につぽんのをみなのはだへ倭文(しづ)みちて森のひるまもたぬしうつくし
きみの壇ノ浦にしづむ蛍火が ひと夜で消える源氏のぼくが
花栗のこがねに揺るるまひるまは臣籍降嫁の譚もただ褪す
藍いろの性混濁の眼でさへも統計どほりの傾向、惜しい
女などみんな愉しき菌(きのこ)だろ。その影も僧帽のかたちでひらひら
男の精しぼり滴する膝下にて短歌の七七、あをく匂ひす
川からのひかりをもつてゆきかへどたえず蹉跌の短歌球面。
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【自損事故】
異教邪教、もうぢき桃の季節なら桃もて自損事故をセクスを
スピードはバイクの先を乗つてゐる → ※手と手袋の関係参照。
「夏帽の国」と華南を呼んでみて、そこにも火人がゐないだらうか。
規定への経路が無限とみえるとき自己外周も夏もきらきら
「草の人」「流木の人」娶はせて未明は豪奢に手許が趨つた。
上すなはち政則-絢音をくつつけた。偶然かいま崖、草だらけ
あきつゆく上尾の川の夢どきは秋にじむ日も牛に耳あれ。
滞洛し頽落きざすこの狭(けふ)をのちの生(よ)として草になるまで
インフルエンザ猖獗をもて南球が取沙汰された星のよろこび。
長谷川を砕いたその日の夕方が藍色だつた肝のごとくに。
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【涙骨】
涙骨を体内ひそかな鉤として帆につなぎつつ野をゆきしかな
装丁ミス。薬効と葉に充ち満ちたこの書にあまた「泣き別れ」あり
俺の骨の水晶部分がふえてゆき掌上じたい消えてしまつた
鬼没のため神出をした森なかで嚢の人らも泣いてながれた
ずつと心にのこしておくよ君の水は。肺胞すべてを青もみぢにして
コギトと樵、その中間のしづけさの林を過ぎて私も小切れ。
内と肉、たがひに相似る一対の悲哀がたとへば廃藩となる
奇怪とは自己洗滌のいやはてに 古経のきみを夢にみたこと
パイプ椅子折りたたまれる一切を音楽として聴く日もあつた。
あれが君の場所だつたのか 草のなか若草色の傘、閉ぢられた
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【燃えつきる】
挙止さへも紙の音するこのごろは点火ひとつで燃えつきるかも
サラダのやうな配合の野に鳥が来て 酢と油もて目をうるませた。
「通信が木立の手段」「それだから通り抜けては私が九人」
睡眠のさなか汀といふべきを春潮あふれ貝を巻くかも
たれよりも黄金のひとたそかれに黄いろく昏れてすがた残さず
頬杖をみなもととして思惟湧くも耳垂れみどり雨の憂鬱
十日めに泪となつて下りてゆく。「液体詩なる身を懸想せり」
群肝に螺鈿ちりばめ想、重し。呪ふかぎりやこの身蓬莱
おのれ編む血のたくらみに恋落ちて十字星なるきみも織られた
牧笛(ぼくてき)やこのゆふがたはむらさきの眷属だけを系にあつめる
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【記憶蚤】
坂のうへ 私ら北を遠望し刻々青い記憶蚤となる
追放はたぶん肋のごときもの横梁を縦が容赦なく割る
駄弁状の語りがあつた。病套のひとらが運ぶ黄花のやうな
SといふイニシャルさくらSさまは光ひきゐて廊をおとなふ
青舌〔セイゼツ〕とふ病を得ては弔問が蝶紋としか言へなくなつた
だつて轢〔レキ〕だろ 死なんて死など万分の礫のなかの小宇宙だろ
是〔ゼ〕の人は区域に草をむすんでは星の落下の場所をつくつた
是〔ゼ〕の人はあばらに青い電をもち心も雫にした人だつた
十月の抱擁だけはむらさきの馬群のなかへ紛れたものだ。
十月は地軸が真水ふふむから きみとの不明も草底のそこ
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【前方後円墳】
前方にして後円のきみゆゑに 性愛パズルも墳然とする
蝶道に往く手きられてゐたりけり。蛾性より来る梯子を待つた。
風に鳴り焼けば焦げたるかをりする黒レインボウを骨肉といふ
鯰ひげ抜かれて逐電した先で(なゐなゐ)ある子と地震に遭つた
かげろふの数時間とは はらわたの非在が展く無身の迷路
はなつから湯疲れてゐてアヲやアカの温泉主義で眼路も霞んだ
蔵〔ざう〕と鳴る乙女を寡黙に仕立てあげ一身鏡のなかは宝界
指なかの金剛力を、朽ちた葉を割らずに掬ふ風気にもちふ。
「女流」の語に滔々と天の流れ見て 天、氾濫が女禍の国かな
一冊を伏せて亡き影さきどつて失の潮目を読むやうな眼だ。
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【華氏摂氏】
地上には華氏も摂氏もひしめけど木犀の陰、私しろがね
低原はとりわけ高温なす場所をお前と馬とで奔つて消えた。
「まほめつ」の見出し語に心ときめいてたまきはるかなこのむらぎもも
この身には口述の痕、ひそとある。川で擁かれる摩訶止観ぼく
勾玉の「まが」は曲〔まが〕なり、禍〔まが〕でなし。着飾つて聴くPerfect Dayを
わたしからわたくし去るを身罷るといへば罷免の生きもさみしゑ
僕の心、平坦にして非電導。ふるへてる、ホラ、茲の真鰈。
産道を落下の最中、逼迫し、「曲がれ」と叫んだ。余韻に産まれた。
千年来、自分を間借りし時々は夕暮のなか家具を展げた
「まかは」とは瞼なれどもこの夏のわれは総身をながれゆく川
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【方法の疲れ】
方法の疲れ、夕日に照らされて刃傷〔にんじやう〕なのかさむい草生だ
水にしづむ夢はだいたい稚なくてわが右派左派も液状をする
七十年、辛子ガスから黄変した眼路をおもつて鷹がいま泣く。
まひるまはしろく耀く繭だから 内に青者〔せいじや〕の着衣も要らぬ
閑文字にしかないひとが邪まを得て火をはこぶ鹿となるかも
パラシュートの着地こばまれ以後夏は成層圏を流れゆくのみ
油照りのなかなる茄子の怖しさ。無を映す有の氾濫のこと。
寝姿の舟に似たるを萍が取り巻いてきて寝のかびくささ
七分裾ずぼんの跋扈、これにより嚢〔ふくろ〕の奔る像がやぶけた
照らされぬ側つねにある枇杷の庭で音声の鳥のあそび生まれた
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【霜月築城】
霜月の築城さびし脳裡には枯葉めぐらすM字開脚
さらさらと虹かかりゆく音のして白をけぶらすお前過ぎたり
馬上やがてまぼろしとなる戦記かやけふの騎乗位ほのかにしろし
嚢のなか枇杷の胤なる哀しみに をとこの不妊はつか乾くも
髭まとふわが有言は有限の色たる朱〔あけ〕もいつしか帯びて
「うそ」といふ名の鳥ならば蝋となるまで銀漠の国めぐるかな
島じまに流木〔ながれぎ〕ありぬ多島とて樹の通過点、ひとやにあらず
破〔や〕れ蝶の泣き萎るさま痛ければそこら辺から梅雨もとけだす
わがゐるは梅雨の筆倦〔ひつけん〕、花白の白消えたれば花でさへなく
泡吹に似る切口の女〔をみな〕かな泡さびし吾〔あ〕には刺細胞ある
(09年07月、ミクシィにアップ)
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【あい編むマイン】
少しづつ憂ふ非自己となつてゆく――あい編むマイン、錫の鉱脈。
撲滅を僕滅と書きたがへてはこころ一所を棒犬とする
いづれもどる哀惜か今日の訣別は。「ブーメラン軌動」なべて愛せど
極上のゼリーのやうな詩句となり まがつぼしとて掌上に揺る
ダリア玉転がるまひる 斬首などさまざま出あふ改行にすぎぬ
「揺ら腸〔わた〕」とわが名呼ばれり 夏夕の器に透きてしづもるまでを
お前にも星採があり窓がある、だから昨夜は斜〔はす〕にし 截つた。
鳥籠のやうに日影が走るので主のためすこし真青も嘔いて
起きだせば茶事に残火を喫しゐて世界もおのれ消ゆるまでの朝焼け
楕円転を地球に招〔を〕きし遍力はフーリエとなり沖に感じた。
(09年07月、ミクシィにアップ)
