▼2006年度 立教後期講義転載レポート
誰にも会わない(佐藤 奈緒子)
【解題】
心理学科2年、佐藤奈緒子さんが提出したマンガ作品は、自身とおもわれる少女の、誰とも会うことのできない日常の逼塞を表現している。ケータイ電話での会話はあるが、彼女は他者とすれちがい続け、死や終末への欲望が水位をあげてくる。そんな危機感が伝わってくる。
むろん、画力は十全ではない。ただ、僕はまず、コマ/時間/フキダシやネームの分散的配剤が見事だとおもった。それらの浮遊状態が主人公の浮遊構造に直結している。しかも分散によって部分が自体化したネームは、自身が詩になろうという兆候をかたどりはじめる。
そして主人公の目鼻は、彼女の疎外を定着するように、どのコマのなかでも明示的に描かれない。
この「目鼻の消去」という事態の確認を通じ、佐藤さんの参照系が魚喃キリコのマンガにあると理解されるだろう。影響を受けたからオリジナリティがないといっているのではない。影響の受け方りよさが、すでにオリジナルだ、といっているのだ。
彼女からのメールによれば、《漫画の始めに描いた英語の文章、あれは実はchicks on speedというバンドの歌の歌詞の一部を引用したものなのです》とのこと。題名「誰にも会わない」は僕がつけた。
(阿部)
誰にも会わない(佐藤 奈緒子)
誰にも会わない
文学部 文学科 心理学科2年 佐藤 奈緒子
